福岡高等裁判所 昭和26年(う)542号 判決
(イ) 政治団体、労働組合等に於てその党員、組合員等を対象として発行する所謂機関紙が選挙に関し報道、評論を掲載してその目的が真に報道、評論の使命を果すにある限り公職選挙法第百四十八条の新聞、雑誌に準じ同法の保護を受くべきものと解すべきである。証人武広茂の供述によると被告人の属する日本炭坑労働組合長崎地方本部に於て判示日時頃機関紙を発行していないことが明であり、機関紙発行の事実を認めるに足る証拠がない。よつて判示「入れよ一票、斗う一票」と題する文書は右組合本部の機関紙号外と認めることはできない。又判示文書(証第一号)の記載、副検事原田反一作成の被告人の供述調書(第七乃至第九項)同藤川三智夫の供述調書(第六項)を綜合すると判示文書は昭和二十五年六月四日施行された参議院議員選挙に立侯補した塩谷信雄、木原津与志の当選を得させる目的の下に発行したものであることが明である。敍上の理由で判示文書は同法第百二十四条所定以外の文書と認めるのが相当である。原審が判示文書を同法第百二十四条所定外の文書と認定したことは相当である。論旨は理由がない。
(ロ)次に職権を以て調査するに同法第百四十二条に所謂頒布とは文書図書を不特定又は特定の多数人に配布することであり、単に一特定人に対し配布したことは同条の頒布に該当しない。原判決認定事実によると被告人が判示文書を配付した先は藤川三智夫一人のみであるから判示文書を頒布したと認定することはできない。前記被告人供述調書(第八項)によると判示日時同一内容の文書を江口労働組合の組合長が副組合長或は書記長に配布したことが窺われるがこれを認定するには補強証拠がない。原審は判示配布行為が不特定又は特定の多数人に対する配布行為中の一に該当するものか或は不特定又は特定の多人数に配布する意思でなした一配布行為であるかを確定し以て判示配布が所謂頒布に該当するか否か認定すべきであつたこと茲にいです慢然判示配布を頒布と認定したことは審理を尽さなかつたものといわねばならない。原審はこの点に於て破棄を免かれない。